本「ぼくとジョージ」レビュー

今日は読んだ本について書こうと思う。

「ぼくと〈ジョージ〉」は、
自分のなかにいる「もう一人のぼく」である〈ジョージ〉との会話を通して、
思春期の心を描いた作品です。

いつもふたりでやってきた、ベン(ぼく)と〈ジョージ〉。
ふたりは心のなかで会話を続けながら、生活を共にしています。

しかしその関係は、学校で起きた盗難事件をきっかけに変わってしまいます。

ことのなりゆきからベンは、クラスメイトや先生、母親からも盗難を疑われてしまう。

それなのに事件を仕組んだ友人に対して、ベンはなにもなかったかのように振舞う。

そしてその様子をみて、
身の潔白を証明しようとしないベンに反抗する〈ジョージ〉。

ふたりは決裂してしまいます。

せっかくできた友人を失いたくない気持ち。
大好きな科学の授業で疑われてしまった悲しみと怒り。
言葉や常識だけで判断できない複雑な感情。
さまざまな思いがふたりを揺れ動かします。

スタジオジブリ鈴木敏夫監督が解説を書いています。

魔女の宅急便」の主人公キキと飼い猫ジジの関係は、
この作品がモチーフになっているそうです。

「一見、なんでもないように見えながら、その内側に大変な戦いを強いられている現代の子供たちにエールを送るという点で、
この本とジブリ作品には共通項がある」

自分が学生時代にこの本を読んでいたら、なにを思っただろう。

否定と肯定が交じり合った感情を、思春期に言葉にするのは難しい。
今だってわたしには十二分に難しい。
その感情がどこから生まれて、なんと呼べばいいのかわからなかったし、「そのまま」で抱える方法も知らなかった。

思春期とは、振り返れば誰しも、気づかないうちにすごいことをやってのけているのかもしれません。

ベンとジョージとのやりとりだけでなく、
ベンと片親の母とのやりとりも印象的です。

「ぼくのこと疑ったりしないでしょ、ママ」

「あなたのすることは信じるわ」

「でも、ぼくを信じる? ぼくのすることを信じるっていうのは、
もしぼくが実験室からものをとったとしたら、
それにはそれだけの理由があるんだと思うことだよ。

ぼくを信じるってのは、ぼくがそんなことを
全然やってないっていえば、
ぼくが全然やってないって思うことさ。

ぼくはママが両方であってほしいよ。 
ぼくも信じるし、ぼくのすることも信じてほしいんだ。」


なにかまだ固まりきらない、記憶の柔らかい部分に触れているような気持ちになります。


ぼくと「ジョージ」 (岩波少年文庫)
著者: E.L. カニグズバーグ, E.L. Konigsburg,
訳:松永 ふみ子