『カチアートを追跡して』

 

ティム・オブライエンの初期作品。

『ニュークリア エイジ』、『本当の戦争の話をしよう』に続き、読了。

 

最近ティム・オブライエンが面白い。ドライブ感やリズミカルな文体が癖になる。リアルで容赦がない。なのに何故かファンタジーでもある。今一番好きな作家かも。

 

パリへ行くと言って戦場を抜け出した変わり者のカチアート。それを捕まえるべく追う小隊の兵士たち。

これは任務だと言い聞かせながら追跡を続け、戦場から、現実から離れていく。

が、これは本当に追跡なのか、それとも逃走なのか?

いつの間にか自分たち自身がパリに辿り着くことを夢見はじめる。

 

時間軸が交錯し、現実と空想が入り乱れながら、物語は進んでいく。

 

耐えがたい現実、果てしない疲労感、終わりの見えない日々。

ティム・オブライエンの作品は、全作とも自身のベトナム戦争での体験をもとに書かれている。

 

「兵士というのは、一人ひとりが違った戦争をしているものだ」

そんな言葉に妙に納得してしまう。

 

戦争そのものだけじゃない。私たちはいろいろなことで比喩的に戦っていて、それは一人でひとりが違った戦いをしているんだ。

 

面白かった。

 

読み終わったときは、本当に夢か現か、、という気分だった。

 

明け方、ふと目が覚めて自分がどこにいるかわからなくなる。

そんな気持ちで読み終えた。