『本当の戦争の話をしよう』ティム・オブライエン
20代半ばで手に取って、読み進められずずっと置いていた本。
『本当の戦争の話をしよう』は実際にベトナム戦争を経験した著者によって書かれた本だ。
大学卒業時に徴兵された記憶を、43才の時に回顧し「戦争の真実」として語っている。
勢いのある文章、次々と変わる場面。
22の短編同士は、少しずつどこか繋がっている。ほとんど長編と言ってもいいくらいに繋がっている。繋がりに気づくたび、イメージは精密に描かれていく。スピードがあるから、ビュンビュンと読み進むことができる。
中毒性のある文体だと思った。
いつの間にか繰り返されているフレーズに、
あっという間に飲み込まれてしまう。
ティム・オブライエン節全開、という感じで、とにかくテンポがよくて、すぐに引きこまれてしまった。
物語としても、表現方法としても、とても魅力的な作品だった。
「本当の戦争の話というのはぜんぜん教訓的ではない。
それは人間の特性をよい方向へ導かないし、高めもしない。」
「本当の戦争の話というのは、戦争についての話ではないのだ。絶対に。」
こんな言葉が印象的だ。
短編にはときどき、著者のティムも登場する。
そして物語の回想とか、書くに至った経緯なども何編か書かれている。
戦争を描いているはずなのに、体験したこともないのに、深く共感する心情が多いのはなぜだろう。
それは描かれている感情がとても深いから、多くの人が感じたことのある感情とどこかで通じているのかもしれない。
なかでも、『レイニー河で』を読んだ時の衝撃は忘れられない。
最近、ふと戦争のことをよく考える。
祖母がなくなったからかもしれない。
ティム・オブライエンを読み始めたからかもしれない。
歴史としてよく語られる戦争ではでなくて、もっと個人が肌で感じた戦争について知っておくべきだと感じている。
祖父母が実際に体験したことを、何かの形でまとめておきたいと思っている。
切れ切れに聞いた言葉が、曖昧になっているからだ。
きっと自分に子供ができたら、こういうことは曖昧にではなく、ちゃんと話したいと思う。
というよりむしろ、話すことができないといけない、という感覚かもしれない。
自分がそんなことを思うようになったことに、
少し驚いている。