忘れられた巨人 レビュー

忘れられた巨人」(カズオ イシグロ)を読みました。

おもしろかったので、久しぶりにレビューを。



過去に起きた大切なできごとが思い出せない。
そんな問題を抱える国に住む、老夫婦を描いたお話。
記憶をさがし、彼らは旅に出ます。
そこで記憶を奪う霧を吐く、山奥に住む竜の存在を知ります。

いつしか二人の旅は、竜を倒そうとする人々と、それを阻止しようとする人々を巡るものへと発展していきます。

過去の記憶は果たして取り戻すべきか。
失ったままのほうが幸せなのか。

旅の途中、ふたりは迷い始めます。
もしも取り戻した記憶が残酷で、ふたりを決裂させるようなものだったら?

基本的には中世ヨーロッパが舞台のファンタジーだけど、戦争の記憶や、夫婦の愛、社会と個人、愛と憎しみ、民族や世代の違いなど。。
問いかけは現代に当てはまるものばかりで、考えさせられました。

ネタバレっぽいですが、この辺りはあらすじとして紹介していたので、書いてもいいかなー。。

テンポがよく、重たすぎず、一気に読めました。

これまでは個人の記憶をテーマにした作品を書いてきたけど、今回は共同体(社会)の記憶を書きたかった、とのこと。
9.11テロ後の世界を考えている中で生まれたお話だそうです。

社会が追いやった記憶とはどんなものでしょうか?痛みや憎しみは忘れるべきでしょうか?

独特の世界観でおもしろかった。

気になる方はぜひ。